『ザ・ロング・サイド』 ロバート・ベイリー | 固ゆで卵で行こう!

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テネシー州ネブラスカ。

地元人気バンドのシンガーであるブリタニーが死体で見つかり、そのすぐ近くで彼女のボーイフレンドで地元高校のフットボールのスタープレーヤー、オデルが発見される。
オデルより弁護して欲しいと頼まれた弁護士のボーセフィズだが、依頼を受けるか葛藤する。




〈弁護士ボーセフィズ〉シリーズ2作目にして完結編。

本作は、『ザ・プロフェッサー』から始まる〈トム・マクマートリー教授〉シリーズ四部作より連なるシリーズの中では、最もリーガルサスペンスものとしては弱く感じる作品だったかも知れません。

しかし、これまでの作品と同じく胸熱な作品である事は変わりありません。


容疑者も被害者も黒人、どちらもそれぞれの分野で将来を嘱望されていた事から世間の注目を浴びている事件で、容疑者であるオデルから事件の弁護を依頼されて葛藤するボーが描かれています。

かねてより目を掛けていたオデルの無実を信じるボーですが、刑事弁護からは身を引いており、なおかつこの弁護を引き受ける事は、被害者家族からはもちろん、同じコミュニティの仲間からも敵視される事は間違いなく、それはボーの息子や娘にも危険が及ぶ恐れも。

従兄のブッカー・T・ロウからも弁護を引き受けるべきでは無いと諭されるボー。

オデル自身は貧しい家庭環境で過去に暴力行為をおこしていた事もある中、事件直前に容疑を固められるような言動を起こしていた事が証言されます。

ブリトニーも家族の間で問題を抱えていただけでなく、バンド仲間などに黙ってソロでメジャー契約を結ぶ事になっており、そこに前作で因縁浅からぬマックスが絡んでいる事が判明するなど、事件の様相も複雑なものとして見えてきます。

事件の弁護を引き受ける事の難しさを実感しつつも、自らの信じる道を選択するボーの姿に、息子であるT・Jが『ものまね鳥を殺すには』を引き合いに出す場面では、息子から父親への信頼と愛情が溢れていて、思わず胸にグッとくるものがありました。


さて、これでもうボーの物語が終わってしまうのかと思うと寂しいですが、著者によるこの一連の物語は毎回胸を熱くさせてくれ、なんとも心に残るシリーズとなりました。

そしてマグマートリー教授やボーと同じ世界線にあるという、著者の新たなシリーズも期待して待ちたいところです。