『ボストン図書館の推理作家』 サラーリ・ジェンティル | 固ゆで卵で行こう!

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オーストラリア在住の人気推理作家のハンナは、ボストン公共図書館で起きる殺人事件を描く執筆中のミステリー小説について、ボストン在住の作家志望のレオからメールにて助言を受けていた。
しかし、レオからのメールの内容は作品に対する感想や助言に変化が見られるようになり…。



本書は人気作家ハンナの出版前の小説原稿を読んでフィードバックする“ベータ読者”であるレオからハンナに送られるメール。

 

それにハンナが描くミステリー小説の「作中作」との、現実と虚構の二つの構成で描かれる、ミステリー・イン・スリラー。



元々、レオの愚痴からインスピレーションを受けて書き出したハンナの小説は、米国最大規模の図書館であるボストン公共図書館で起きた殺人事件を描くもので、偶然同じテーブルに居合わせた男女4人の中に殺人犯がいるというミステリー。

オーストラリア在住のハンナにレオは米国らしい描写等についての助言をメールで行っているんですが、その内容が徐々に変化を見せ、それが作中作にもリンクされている様子に不穏なものを感じるように。

ハンナとレオは、長い付き合いながら実際に会った事は無く、作家になる夢を追いかけるレオは、いつしかハンナに対して丁寧ながら不躾とも思える要望を記すようになる他、作品に対しても自身の意見を押し通そうとするようにも。

そんなレオへの返答でもあるかのように作中作のミステリーは描かれており、ハンナが何を受け入れ、何を省いているのか。


そしてそれは何を示唆しているのかが分かってくると、現実も虚構も、どちらも面白さが増してきます。



作中作の方も読んでいて作中作である事を忘れるぐらい面白く、その作中作の主人公フレディも現実世界のレオと同じくボストン公共図書館に通う作家志望である女性。

そのフレディが偶然同じテーブルに居合わせた自分以外の三人の中に殺人犯がいると最初に明言するので、誰が犯人なのかという謎で強く物語をけん引してくれます。

 

それと共に描かれる四人の友人関係や恋愛模様合が面白く、作中作だけでも十分楽しめる内容でした。



果たして、作中作で描かれる謎の真相は。
そしてレオとハンナ、現実と虚構の関係は。



なお、作中作には現実の世界のレオと同じ名前の人物が登場するのですが、そのレオの描かれ方というのが面白く、特に最後の最後での描かれ方には思わず「え?!」となりつつも「なるほど」とニヤリとしました。


ところで最近、作中作を描いたミステリを読む機会も多かったですが、本作はまた違った魅力がありましたし、実際の作家さんも色々考え、新たなチャレンジされているんだなと思うと面白いですね。