〈冬の王〉三部作の完結編。
久しぶりに夢中になって読み耽ったファンタジー小説で、いやー、良かったです。
ファンタジーですが、中世ロシアを舞台にし、史実に従って描かれる最後の戦い(クリコヴォの戦い)など読み応え満点。
家族を、そしてモスクワを守るために、〈冬の王〉からの想い、〈冬の王〉への想いを断ち切ったものの、結果的にモスクワに火をもたらした事で魔女として糾弾され、人々の怒りを受けて処刑されそうになるなど、文字通り傷だらけになったワーシャですが、本当に大人になったなぁとしみじみ。
〈冬の王〉マロ―スカに対する想いと人間世界と家族への想いの間で、より苦しい道を進む事を決意する姿。
人と神への信仰と土着の精霊のとの共存、種族を超えた信頼や愛など、難しい現実に希望を持とうとする様子、それはワーシャの、もの哀しくもある心の強さとしてあらわれます。
とはいえ行く先への迷いや、覚醒した力に溺れそうになるなどの弱さがあるのもワーシャの魅力で、だからこそ彼女が描く理想を応援したくなるんですよね。
うん、完結編まで刊行し読ませてくれた事に感謝です。
それにしてもワーシャにとって敵でしかなかった〈熊〉メドベードが、なんとも人間らしい言動を見せ、ワーシャとのやり取りでは思わず笑ってしまうような場面もあって、どこか可愛くも見えて好きになってしまったのが、もしかしてこの物語で一番の意外性だったかも。
そして何よりも可愛いのは二頭の馬、忠実な友ソロヴェイと、ツンデレなパジャールだったりもして(笑)。



