※ネタバレあり『イット・スターツ・ウィズ・アス ふたりから始める』 コリーン・フーヴァー | 固ゆで卵で行こう!

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イット・エンズ・ウィズ・アス ふたりで終わらせる』の続編となる本作もやはり感動的で、最後はやはり涙しちゃいました。

その辺も含めネタバレ無しでって難しく、今回は前作を踏まえての、ネタバレ有りな感想となります。

以下、前作を含め、未読の方はご注意下さいませ。


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前作ファンの熱い声に応えて描かれた、リリーとアトラスの物語。

街で偶然再会した二人の愛の行方が気になっていた読書には、嬉しいボーナストラックです。


とはいえ、単なるボートラ的な物語にはしてくれないのがコリーン・フーヴァー。

二人が共に人生を歩むようになる幸せな描写の中に、乗り越えるというか、受け入れていくべきものが挿入されるのですが、この塩梅がいいんですよね。


まずはリリーにとっては、元夫であるライルが何より心配の種。

娘の父親として、今後も良好な関係でありたいところではありますが、ライルが怒りをコントロールする事が出来なければ、娘の身の安全も保障できるものでは無いですし、アトラスに対しても何をするのか分かりません。

もちろん、リリー自身に対しても。


一方のアトラスにとっては、存在すら知らなかった異父弟ジョッシュが現れ、自分に対してもそうだったように、子供の事を顧みない母親から、ジョッシュの心も体も救う必要が。


この二つの問題を軸に、リリーとアトラスがより強く通じ合っていく様子が描かれていくんですが、二人のイチャイチャぶりは微笑ましくもありつつ、なんとも気恥ずかしいものが(笑)。

かつてリリーがアトラスとの事を書いていた日記をアトラスが、逆にアトラスがリリーに向けて新たに描いた手紙をリリーが、それぞれが読む場面は赤面もの。
 
でもそれが、互いの絆が深まる、実に感動的な場面にもなっており、特にアトラスからリリーに向けての手紙には思わずウルウルッとくるものがあるんですが、特に終盤とラストの一文には、もう……!
 
あと、リリーがアトラスをクローゼットに押し込む場面なんかは、やはりこういうシチュエーションて日本の少女漫画とかじゃなくてもあるのねぇ、なんて思ったりも(笑)。


そんなリリーとアトラス、そしてリリーとライルの娘のために、ライルとの問題が最大の障壁。

前作ではDVという問題があっても、それでもそこにリリーへの、そして娘への愛は真実だと思えるからこそ、ライルの悔恨と慟哭に胸を打たれ、複雑な感情と共にライルを嫌いになりきれなかったものです。

しかし本作でのライルは、リリーに対して、リリーが自分自身が悪かったと感じるように、まるでマインドコントロールするかのような言動を繰り返すなど、とにかく最悪な元夫という形で描かれています。

前作で多少なりとも感情移入していただけに、この辺りはちょっとガッカリというか残念な気持ちにも(笑)。

とはいえ、色々ありながらも最後はリリーと何より娘のために、リリーたちの未来を受け入れ変わろうと、そして前に進もうとする姿を見せてくれたのは救いのように感じれました。


ところで本作にはアトラスが自身の恋愛の事なども赤裸々に相談するセオという少年が登場しますが、年の離れた少年にそこまで話すのは恥ずかしくないんでしょうかね(笑)。

また、異父弟のジョッシュとの距離が縮まっていく様子などはもっとじっくり見てみたかったかも。

もっともその辺りまで描くとボリュームあり過ぎて焦点がぼやけてしまうかも知れませんね。

セオは同性が好きという設定も、本作ではさらりとしてしか描かれていませんでしたし、同じ世界で、ジョッシュの物語やセオの物語など、他の登場人物をメインにした物語というのも知りたくなりました。