銀行員のカーターが何者かに襲われ、攫われる。
MI6よってロンドンに呼び出された元フランス外人部隊出身のダン・ラグランは、旧友であるカーターを救うべく動き始める…。
イングリッシュマンと呼ばれる元フランス外人部隊(レジオン)出身のダン・ラグランの活躍を描いたサスペンス・アクション。
銀行員のカーターは何故、襲われ攫われたのか。
この辺りの謎的なものは、正直、謎というほどのものはありませんが、子気味良いアクションの連続で読ませます。
さて、主人公のラグランですが、一匹狼のようかと思っていたんですが、レジオンの掟など、仲間との絆や友情、そしてロシアから派遣された捜査員“氷の女王”ソロキナに惹かれる姿など、普通の男として人間味ある姿を見せてくれます。
また、有能ではありますがマーク・グリーニ―の“グレイマン”のような伝説的な強さを見せつけてくれる訳でも無く、意外に陽気なキャラクターでもあり、女性にもモテて、嫌味が無いのが逆に欠点のような気もします(笑)。
加えて、攫われたカーターの妻、そして襲撃を受けた時にカーターと一緒にいて辛くも逃げる事ができたその息子に寄り添う姿も、ラグランの友情の厚さと熱を感じさせてくれます。
もっとも、実はこの辺り、自分はうがった読み方をしていたんですが、特に裏がある訳でも無かったので、個人的にはちょっと物足りなく思ったりも(笑)。
さて、序盤から中盤はロンドンにて、攫われたカーターを救うためのアクションが描かれていますが、終盤は自ら死地(ロシアの刑務所)に潜り込んで、カーターと家族、そして自分のために戦います。
この刑務所のくだりが最も危機感と緊迫感があって読み応えありました。
なので、この部分をもっと読んでみたかったなというのも率直な感想でもありますが、腕利きで情に厚いラグランの活躍をまた見てみたいので、続編にはより期待しています。
ところで、ラグランをサポートというか運転手役としてMI6から派遣されるアビーというエージェントが特にいいキャラクターでした。
ドライバーとしてロンドンの道を知り尽くしている様子、自宅に招いたラグランが両親と打ち解ける様子、ラグランに惹かれ、そしてラグランとロシアから来た捜査員に対して嫉妬したり、ラグランの役に立とうと逸る姿など、この物語の中で最も人間味溢れていて魅力的でした。
それだけに、彼女に対する仕打ちには、著者に文句の一つも言いたくなったりして(笑)。

