『魔界都市ブルース 媚獣妃』 菊地秀行 | 固ゆで卵で行こう!

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美しき人捜し屋、秋せつらを主人公にした長編シリーズ〈魔界都市ブルース〉最新作。

今回は伝説の媚薬「王妃マーゼンの唾」によって、新宿のみならず世界が危機に陥るというお話。

その媚薬に触れたものは性的興奮のまま人を食い殺すという恐ろしい感染能力を有しており、魔界医師メフィストすらその成分を解明しきれないという。

せつらの幼馴染という女性ユミは、その媚薬でもって世界を破滅へと導くのか。
せつらは、そして魔界都市《新宿》はそれを阻止できるのか。

今回は〈私〉のせつらが2度もあったのは嬉しかったですね。
もっとも1度目はどうして〈私〉が登場となったのか、いまひとつよく分からなかったですが。

相変わらず、普段のせつらの茫洋とした様子や独特なユーモア、そして美しさは変わりませんね。
この辺りは読んでいてやはり楽しいですし、〈僕〉から〈私〉に変化する場面はゾクゾクとします。

そして容赦ないバイオレンス描写が多いけれど、時にはその中に哀切感を紛れ込ますあたりがこのシリーズの魅力だなと再認識です。

それにしてもラスト。
絶体絶命のような危機的状況を一発逆転させてしまうラスト。
これもいつもの通りかと思います。
でも、いやー、これほどまでに潔くあっさりと描かれているのも久しぶりのような気もしますが、気のせいかな~。
 
また、今回登場する幼馴染のユミですが、あまり幼馴染である必要も無かったような…。

そうそう、今回、せつらの従弟で花屋を営む、ふゆはるが登場。
これは珍しいですよね~。
あちらのシリーズはハマれず読み続けていなかったので、実は彼の事はあまり知らないのですが…。