〈会社〉の指示で暗殺に関するプロットを書く事を生業とする主人公。
もともとはクラスでも顔と名前を覚えられていないような影の薄い人物で、楽しみはパソコン通信にて、ミステリー小説を発表する事。
やがて軍隊に入り、除隊後のインターネット事情を含む環境の変化に戸惑う中で、かつて主人公が書いていたミステリーのファンだという人物が現れ、犯罪小説を書いて欲しいとの依頼が。
ただ、奇妙な事に、小説の材料(被害者の設定などの資料)は依頼主から提供されるので、主人公はプロットを作りあげて犯罪小説を書きあげる形をとるというもの。
意外にもその条件が苦にならずに、いくつもの依頼を受けて完全犯罪のシナリオを作り上げる主人公ですが、やがて、自身が作り上げた完全犯罪の内容と同じ事件が現実に起きている事を知ります。
真実に気付いた主人公ですが、罪の意識を感じつつも〈会社〉による好条件に惹かれ、仕事として依頼をこなすようになるのですが、実は、その主人公が自身の職業がバレて、もしくは〈会社〉に利用されて窮地に陥る・・・というようなものを想像していて読んでいました。
ところがこれがちょっと違っていました。
設定だけ読むと、ダークなミステリーのようですが、実は純文学的(?)な内容で意表をつかれました。
ただ、確かに主人公自身は自分自身と向き合うになる事で、ある意味その生き方に関して窮地に陥っている様子を見る事ができます。
愛なのかどうかも分からないまま付き合うようになる女性との関係の行方や、ターゲットになったのが自身の知り合いだったりといった経験を経た主人公を通じ、そこに描かれているのは、現実を生きる上での諦観、達観など、人の生き方そのもの。
誰かの命は、誰かのひとつの行動の結果により、救われるも、逆に失われるも。
それを「仕方ない」ものだと受け入れられなければ、生きていく事は難しい。
それに気づき、自覚しながらも生きていかなければならないというのは、なんとも物哀しく、それを抱えて生きるのは苦々しいものではないでしょうか。
なんだか、鈍感力こそ幸せの源であるなんて思ったりも。。。
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