ロマンス小説「あるある」を、ちょっと皮肉めいたように描かれる様子も可笑しく、ヒロインのノーラとヒーローたるチャーリーのユーモアたっぷりに交わされる、駆け引きのような会話の連続に終始ニヤニヤ(笑)。
本は最後を確かめてから読むというノーラの先の読めない物語の行方は果たして?!
姉妹を育ててくれた魔法使いのような素敵な母親が亡くなって以来、妹のリビーを第一に考えながら文芸エージェントとして働き詰めのノーラは、周りからも冷たい人間のように見られており、自身でも自覚する、まるで田舎町ロマンス小説の悪役であるかのように付き合う男性からはフラれ・・・。
そんなある日、リビーから三人目の子供を出産する前に姉妹だけの田舎町へのバケーションに行こうとの誘いに、妹のためにと提案を受け入れ訪れた田舎町で、かつて本を売り込んだものの、冷たくあしらわれた因縁の相手であるチャーリー・ラストラとノーラは出会います。
はじめは犬猿の仲のような二人ですが、二人とも自然と相手に視線がいく様子から実は二人は似たもの同士である様子、そしてお互いに惹かれ合っている事を自覚しながらも進展しそうでなかなか進展しない様子は、ロマンチック・コメディとしての楽しさを十二分に味わえます。
そんな中で、妹のリビーがこの田舎町に来てからどこか様子がおかしい理由に気付いた時、やり手の文芸エージェントとして、そして妹を守る姉という築き上げてきた自我の裏に、抑え隠してきた自身の弱さを自覚したノーラの姿は痛々しくもありました。
しかし、そんなノーラを包み込んでくれるチャーリーの優しさはなんともいえないものが。
そんなチャーリーも実は心に傷を抱えているノーラのサメのような強さの裏表のような存在のようで、二人が抱えてきた痛みには思わず涙だけど、二人が共に自分自身を肯定できるようになり、最後は暖かい気持ちになれましたし、ラストの二人のやり取りがとても素敵で、そこもまたニヤッとしてしまいました(笑)。
ところで本書は、相手を認めるだけでなく、自分自身を認め、ハッピーエンドを迎えるロマンス小説としての楽しさは勿論だけれど、ずっと妹は庇護する対象であると思い続けてきたノーラの成長する様子もまた印象に残りました。
母親を亡くして以降、リビーは姉であるノーラに依存していたかのように見えますが、実はリビーを自分の弱さや傷付いた心の拠り所としていたのはノーラの方でもあったんですよね。
ノーラとリビーがちゃんと向き合った結果、ノーラも本当の意味で自立して幸せを得る姿は胸を熱くさせてくれるものがありましたし、そんなノーラだからこそチャーリーと幸せになって欲しいですよね。
ところでヒーローのチャーリーですが、個人的にはノーラが惹かれる理由になるような、格好いい姿や場面がもう少し欲しかったかな。
ただ、本書を読んだ妻は特にそうは感じなかったようなので、この辺は好みの問題でしょう(笑)
