難病を患う2歳の娘ポピーの治療のために、支援者の協力を得て、パーティや劇、グッズ販売なの活動を通じて治療に必要な資金を集める地元の名士であるヘイワード家。
支援金は順調に集まっているかのように見えたが、その裏では様々な問題が・・・。
メールやチャットなどのやり取りだけで描かれるサスペンスなんですが、この面白さはどうにも説明しづらいんですよね。
しかし、読んだ人同士ならきっとその面白さについて熱く語り合ってしまうこと請け合いです。
街の有力者の一族であるヘイワード家。
そのヘイワード家の恩恵にあずかる街の住人たちは、純粋にヘイワード家のためにだったり、ポピーを助けるためだったりする一方で、何やら不穏な空気が流れているのを読者は感じるようになります。
登場人物たちのメールでのやり取りの中で、慈善パーティでの報酬問題や、ちょっとした嘘(誇張)から物事が大きくなっていく様子、治療に必要な新薬に関する問題、住人達による劇団の中での人間関係などなどが浮き彫りになっていきます。
しかし、あくまでも描かれるのは送られているメール等の文面のみ。
なので、送信側の主張は果たして全面的に信じていいものなのか。
そう、これは信頼できない語り手の物語。
それも、登場人物それぞれが信用できそうにないため、果たして何が起こっているのか、何を読まされているのか困惑の渦に。
そして、ようやく背景が薄っすらと見えてきたところで起きる事件が、更なる混迷を生み出します。
最初は登場人物も多く、何が起きているのか分からない事もあって、戸惑い、読みづらい部分も若干ありましたが、特にとある登場人物の言動に、作中の他の関係者たち同様に振り回されながらも、それはクセになってしまうという、奇妙で楽しい読書体験をする事が。
アイデア的には似たような作品て他にもありそうですが、このクセになる感覚を生み出す手法には感心しちゃいますね。
実際、特に文章でだけとなると、自分を良く見せようとか、自分に都合のいい風にしか書かないとか、そういった部分て「あるある」かも知れず、その辺は不快に感じると共に共感する部分もあって、よりクセになるのかも。
とにかく読み終えると、今後は気軽に「やっほー」とは言えなくなるかも知れません(笑)。
ところで本書はKindleで読んだんですが、Kindleの端末、paperwhiteだとチャットの部分が読みにくかったです。
なので、電子で読むなら拡大できるような端末、PCやタブレットなどで読むのがおススメです(;・∀・)
