母は妊娠した際に宮内とは縁を切りひとりで生んで育ててくれたため、その母が死んだ後も連絡ひとつ寄こさない会った事もない父については、何の感情も沸かない文字通り赤の他人。
しかし、宮内の息子から連絡があり、父が病の中で書いていた『世界でいちばん透きとおった物語』という作品の原稿を探す事に。
その中で次第に明らかになる父の姿とは。
そして父の遺稿とはどんなものなのか。
妻子がありながらも死ぬ間際まで複数の女性と関係を持つような父は、人としては下種としかいいようのない人物に見えます。
しかし、ミステリ作家としては多くのファンに愛されていた事が、父の遺稿を探すうちに明らかになり、燈真もただ憎しみを覚えていればよかった対象から、複雑な気持ちを抱くようになっていきます。
それゆえ父が遺した作品に何か意味があるのかと、いつしか積極的に探すように。
亡くなった父が何のために最後の作品を書いていたのかは予想つきます。
けれども、その作品そのものと、そしてこの本書そのものの仕掛けにはびっくりさせられましたし、なにより父が遺した「」の意味が透けてみえた時は思わず、ぞぞっ、とするような感動も。
いやー、なんというか、こういう感動の仕方をさせられるとは思いもしませんでしたし、そのためにどれだけの労力を費やしたかを思うと、著者にはお疲れさまでしたと素直に言いたくなりますね(笑)。
まさにネタバレ厳禁!
きっと電子化はされないであろう本作は、これからどこかでネタバレ食らう前に読むべし!