『テロリストとは呼ばせない』 クラム・ラーマン | 固ゆで卵で行こう!

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時に映画やRockな日々。またDragonsを応援する日々。そして珈琲とスイーツな日々。

 
前作のラストが「えぇ?!」ってところで終わっていたので、その後ジェイはどうなっていたのか心配になりながら読み始めましたが・・・
 
あぁ、なんて面白い!
 
けれど、単純に面白かったとは言えないのがこのシリーズ。
 
衝撃的なラストだった前作以上にサスペンスフルな展開で、特に中盤以降は一気に読ませます。
 
前作で単なる麻薬の売人だったものの、MI5のスパイとしてテロリスト組織に潜入し、心身ともに傷を負ったジェイ。
 
今回は不動産屋に勤めるイミーがもう一人の主人公となり、イスラム諸国と欧米諸国との人種や宗教、差別やヘイトといったものが重くのしかかるように描かれます。
 
その中で、今回は何よりも個の感情、愛憎が深く描かれるだけに共感値も前作以上。
 
それゆに待ち受ける悲劇の予感に震え、読み進めるのが辛くなる程でした。
 
ロンドンに住む昔からの住民と、ムスリムたち移民との関係性と根深い差別意識。
 
それぞれがそれぞれの立場で固執する考えや感情は暴力と報復へと負の連鎖となって断ち切る事が出来ません。
 
その虚しい連鎖を断ち切るのは、平和ボケした日本で暮らす自分のような読者には想像するのすら難しい。
 
それでも、そこで描かれるジェイの人としての強さは何よりの希望ですね。
 
ただ、なんとラストはまたも衝撃的な場面が!
 
この時代、今だからこそ読んで欲しいシリーズ三部作の完結編となる次作の翻訳が待たれます!