映画『僕の巡査』とその原作『マイ・ポリスマン』 | 固ゆで卵で行こう!

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ハリー・スタイルズ主演でAmazonPrime配信の映画『僕の巡査』を観ました。

 

 

 

 

 

原作はベサン・ロバーツの『マイ・ポリスマン』。

 

 

映画は基本的に原作通りに丁寧に描かれており、同性愛が犯罪として裁かれる時代に、自分自身を隠して生きなければならないマイノリティたちの愛と哀しみ、苦悩が、美しい映像と共に描かれています。

 

若い警官であるトムに惹かれるパトリックとマリオン、この三角関係は、トムとパトリックの秘密に関係のうえに成り立っており、その事に気付き始めるも直視できなかったマリオンにはトムを愛するがゆえに、長い期間、自分自身を苦しめる事になる様子には胸が痛くなります。

 

そしてパトリックがトムを愛するがゆえに、そしてトムもパトリックを愛するがゆえに、二人の秘密で幸せな時間が増えるたびに不穏な空気も高まり、全体的に抑えたストーリー展開の中にも緊張感が高まっていくかのようでした。

 

しかし時代が、そして世間の目があるからといって、自分を信じるマリオンと結婚したトムがやはり不誠実なのでしょうか。

トム自身の視点が、原作でも、そして映画版でも基本的には無いので、トムの本当の心の奥底は覗けないかも知れませんが、トムの純真さがこの悲劇を生み、それゆえトムは孤独な時間を過ごさなければならなかったのでしょう。

 

三人が三人とも悔恨や苦痛、孤独に満ちた時間を過ごす結果になった訳で、その長い時間を考えるとそれぞれの純粋な想いに胸が苦しくなります。

 

けれどもその先にマリオンが下した決断はなぜか爽やかのようにも感じるものがあり、パトリックに寄り添うトムの姿には思わず目頭も熱く。

そしてマリオンの輝きに満ちたラストシーンはやはり美しく思えるものでした。

 


ちなみに原作を読んだ時の感想はこちら↓

 


ところで原作にあって映画にないものといえば、マリオンの同僚(先輩)である女性教師の設定でしょうか。

この辺、原作ではマリオンの決断の一因にもなっているのですが、これは映画版はより三人の関係を重きにおくためだったのかな。