カリフォルニア州の海沿いの町ケープ・ヘイヴン。
30年前にひとりの少女が命を落とした事件の加害者であるヴィンセントが帰ってくる。
無法者を自称する少女ダッチェスは、恋人だったヴィンセントが起こした30年前の事件から立ち直れずにいる母親と幼い弟を支えるように、懸命に日々を送っていた。
一方、町の警察署長ウォークは、30年前の事件で親友のヴィンセントが逮捕される証言をした事に、いまだ心の奥底に澱みを抱えていた。
そんな彼らの前にヴィンセントが帰ってきた事で新たな事件が・・・。
噂に違わぬ素晴らしい作品でした。
読み終えて思わず嘆息し、しばしその世界に浸ったまま余韻から覚める事ができなかったです。
読んでいる間は辛くなるような場面も多く、その先には更に悲劇が待っているしか無いとの予感に震えます。
けれども、その場面場面がなんとも印象深く情景も目に浮かぶようで、だからこそ気付かぬうちに心に染み入るものが。
なんといっても無法者を名乗る少女ダッチェスを軸とした物語が不穏で危うい空気が漂いながらも瑞々しい。
ダッチェスの母親スターは、薬や酒に溺れる酒場のシンガーで、子供たちに対する愛情はあっても、ほぼ育児放棄のような状態。
ダッチェスのそんな母親に対するダッチ愛する気持ちと諦念感といった様々な想いを抱えつつ、弟のロビンを守るために、まさに無法者となって戦う姿が魅力的で、彼女を好きになる読者が多いのも頷けます。
しかし、もう一人の主人公で未だに子供のままのようなウォーク署長が個人的には胸にグッときました。
自身が抱え続けてきた胸のしこり。
かつて愛した人への想い。
ダッチェスたちを見守り続ける気持ち。
そしてヴィンセントへの複雑な感情が発露されるような言動の理由が明らかになっていく姿には、思わず目頭も熱く。
更には、ダッチェスを助ける人物たちや、悪役的な人物たちも含め、それぞれが抱えていたものを思うと誰もが決して憎めず、むしろ誰もが魅力的です。
それゆえにその結末は切なくやりきれない。
なのに希望もあって読後感も良い。
これはまさにオールタイムベスト級な作品。
読み終えるときっと、きっと誰かと語り合いたくなります。。。
