「しみじみ、いい作品です」
そう紹介されて手に取った本書ですが、確かにしみじみといい作品でした。
モンテ・ローザ山麓で出会ったピエトロとブルーノ、二人の少年が育んだ友情を軸に描かれる山の情景と生活の様子が、なんとも瑞々しく、いつまでも読んでいたくなります。
ミラノの街からアルプスの麓に夏のあいだに訪れるようになるピエトロが出会う牛飼いの少年ブルーノ。
内気なピエトロとは対照的なブルーノに引っ張られるように、ピエトロは山の生活を楽しむようになります。
一方で山歩きの独自の美学、考え方を持つ父親との関係は悪化していき、いつしかピエトロは街から離れなくなり、孤独な父親と仲直りできないまま大人になっていきます。
そんなピエトロの哀しみや後悔も、一度離れた山を再び歩くようになる姿、そして何事もなかったかのように再び友情を深めていくブルートとの関係を通じて胸を打ちます。
それにしてもやはりその生き方は対照的なピエトロとブルーノ。
山を愛するけれど外の世界にも目を向けるピエトロと違い、自分の生まれ育った山での生活に拘るブルーノ。
八つの山を巡る者と須弥山を極めようとする者の、自身を貫ぬく生き方の正解は無いのかな。
父との確執、家族の在り方、厳しい現実に生と死が、淡々と言っていい描き方がされる中、自分自身の原体験、原風景に郷愁を覚え、胸の中になんともいえない火が灯るのを感じてしまいます。
低山ばかりだけど山歩きをする自分にとっても、やはりどこか懐かしくも憧れを抱く、そんな物語で、ちょうど読み終えた後に白山登山をしたので、本書の内容を何度も思い返しながら登ったものです。
