アンディ・ウィアーの『アルテミス』を再読です。
初読時はあの『火星の人』に続く著者の作品という事で期待値が高った事もあり、『火星の人』に比べるとカタルシス感も高くなかった事もあり、評価は低めになった記憶があります。
しかし改めてフラットな気持ちで読んでみると、いやいや面白いじゃないのこれ!
ジャズというキャラクターの人となりを分かっていることもあって、月の生活での説明もすんなり入ってくるからかも。
とはいえ再読でもやはり序盤からなかなか入り込めなかったのは、理系じゃない人間は置き去りにするかのように進むせいでしょうか。
やっぱり科学の説明、SFなガジェットには脳をフル回転させても想像できなかったりした自分の脳が恨めしかったです(笑)。
それにしても本書に続く著者の最新作『プロジェクト・ヘイル・メアリー』も含めて、アンディー・ウィアーの作品には、嫌いになるような人物って出てこないですね。
この『アルテミス』でも、普通なら悪役になりそうな人物も、決して純粋な悪役としては登場しないため読後感も爽やかです。
でも、よく考えたらジャズが一番の悪人なのかも。
ジャズの行動原理は基本的に自分のためであって、自己中心的といえばそう。
そんな彼女が起こした事態は、大勢の犠牲者が出てもおかしくないもので、責めを負うのは仕方ないと思えますが、アルテミスの住人たちは彼女に甘いんですよね(笑)。
ジャズは最終的にある‟責任”を負う事になるのですが、その‟責任”を負った彼女の活躍ってのも見たくなりますね。
ところで今回再読し、アルテミスの文化、生活様式みたいものも、もっと知りたいと思いました。
例えばアルテミスには地球から富裕層が観光に訪れアルテミスで買い物をしたりする訳ですが、そもそもは何も無い月で一体何をお土産などを買うんでしょう。
月の石以外に名物ってなんだろとか思わず想像したりして(笑)。
また、ジャズが地球から密輸している品物ってどんな物があるのかとか、本筋とは関係無い部分も気になりました。
著者は主人公を変えてアルテミスの世界を描いていきたいという構想があったようですが、その辺も含めてシリーズ化して欲しいかも。
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