織田信長の軍勢により越前の国、一乗谷城は陥落。
幼き匡介は逃げる途中に石垣職人の源斎に助けられ、。源斎を頭目とする石垣作りの職人集団の穴太衆、飛田屋で育てられる。
その中で自身の家族のように戦によって犠牲者を出さないために、匡介は絶対に破られない「最強の楯」である石垣を作れば、戦を無くせると考えるようになる。
一方、鉄砲作りの職人、国友衆の次期頭目・彦九郎は「至高の矛」たる鉄砲によって恐怖を植え付けることこそ、戦の抑止力になると信じていた。
そんな二人の信念が太閤・秀吉亡き後、関ヶ原の戦いの前哨戦たる大津城の攻城戦にてぶつかる――!
城の石垣を組む職人が主人公という発想がまずもって興味深かったです。
そもそも石垣を組む事を専門にした職人がいた事も知らなったので、それだけでも新鮮でした。
そしれそれ以上に中身も、特に終盤は胸が熱くなり、そして動悸が抑えれなくなるぐらい夢中になりました!
共に泰平の世を目指すも、誰にも破られない石垣を作ろうとする匡介と、何ものも撃ち砕かんとする鉄砲を作ろうとする彦九郎。
二人の想いは方向性は正反対ながら、目指すのは泰平の世。
そんな二人の純粋な想いのぶつかり合いは、正に矛盾そのもののぶつかり合い。
どちらが正しいとは言えないけれど、大津城で一つになった時の、人々の満ちた想いが何よりの答えでは無いでしょうか。
それにしても蛍大名と世間からは揶揄されつつも、民の命を一番に考える大津城主の京極高次が滑稽な姿を見せながらも最も格好良かった。
その妻のお初共々少々狙いすぎなキャラかと思わないでもないですが、素敵な夫婦でほっこりしました(笑)。
ところで本書は今村翔吾さんのサイン会に参加、ため書きでサインしていただきました。
また、講演会にも参加できてお話を聞く機会を得る事が出来たんですが、その中ではもちろん、直木賞を受賞した本書のお話も。
一乗谷城はアップデートされる前のお城だったとか、本来は朝倉氏は大きな勢力をもっており、こんな短期間で信長の軍勢によって敗れたのは様々な要因が重なったからだったなど、本書の冒頭で早々に陥ちた一乗谷城と朝倉氏について、講演会に参加した福井県民にフォローするかのようにお話されていました(笑)。
