若い頃からパニック障害と鬱に悩まされてきた劇作家で大学教授でもある呉誠(ウ―チェン)。
ある日、芝居の打ち上げの席で出席者全員を辛辣に罵倒した事をきかっけに、芝居も大学も辞め、台北の裏路地・臥龍街にて私立探偵を始める。
しかし、台北中を震撼させる六張犂(リョウチャンリ)連続殺人事件に巻き込まれ、容疑者として警察に拘留されていまい…。
いやー、これは面白かったです!
昨年刊行された時に気になってはいたものの、スルーした自分を罵りたくなるぐらい(笑)。
しかし、主人公の呉誠(ウーチェン)、序盤はとっつきにくく感じるキャラクターですよね。
最初の呉誠一人語り、自分語りが冗長というか、「何を言ってんの、こいつ」「うざっ」って、周りから敬遠され、奥さんに逃げられるのも思わず納得。
実際に自分の身近にいたら、まず好きにはなれないでしょう(笑)。
でも、終盤で事件の真相が明らかになっていく時に、この最初の主人公のうざそうな部分が、実はキモだったこと、大きな伏線だったのではと驚くと共に、個人的にはそのシニカルでユーモアある自分語りの部分は、樋口有介や平井和正、そしてチャンドラーを混ぜて割ったように思えて面白く、そして楽しめました。
何より呉誠が容疑者となってからの展開というのは、読むのを止められなくなるぐらい昂奮するものが。
台湾の文化、風土、台湾人論、それにシリアルキーに対する考察や日本人に対する考え方などが盛り込まれながら、連続殺人犯との対決に向かっていく様子は、呉誠が置かれた窮地から脱出しようとする様と徐々に明らかになる事実がテンポも良く描かれ一気読み!
割と正統派なハードボイルドな様式で描きつつも、こんなに新鮮な気持ちで読ませてくれたのも驚きでしたし、呉誠のユーモアのあるシニカルな目線というのも、猥雑で混沌した台北の街とそこに住む人々を愛しているからこそでしょう。
呉誠を助けるタクシー運転手や警察官といった登場人物も良かったですし、出番は少ないながらも呉誠の母親もいい味出してましたし、また、別れた妻から心配される様子やかつての演劇や教職時代の仲間に助けられる様子などからも、色々人から嫌われる言動を取ってきたにせよ、呉誠が愛すべき人物なんだろうなと想像されます。
だからこそ最初は人間嫌いでうざそうに見えた呉誠が、探偵となり下町で知り合った人々から愛されるようになっていく様子もまた読んでいて楽しかったですねぇ。
続編も期待大。
翻訳、待っています!!
