かつて異様な殺人現場にて発見された少女イーヴィ。
人がついた嘘を見破るという特殊な能力を持ち排他的で攻撃的な彼女と、臨床心理士のサイラスは施設で出会う。
そんな折、将来を嘱望されていたスケートの女子選手ジョディが惨殺され、事件の捜査にサイラスは加わる事になるのだが・・・。
臨床心理士のサイラスは、旧知の児童養護施設職員に頼まれ、かつて陰惨な現場で発見された少女イーヴィと邂逅します。
排他的で攻撃的なイーヴィですが、実際の年齢も過去に何があったかも分からないだけでなく、実は他人の嘘を見抜く能力を持っています。
一方のサイラスも子供の頃に家族を殺された過去を持っているのですが、警察からの協力依頼を受けてフィギアスケート選手として将来を嘱望されていた少女が殺された事件の捜査に関わっていきます。
その捜査の行方を軸にしながら、サイラスとイーヴィの二人の関係性がどう変わっていくのか気になりながら物語は進んでいくのですが、スケート選手殺人の捜査は二転三転します。
この辺りの描き方が実にうまいのですが、嘘を見抜く能力をもつイーヴィがサイラスの助手となって活躍するのかと思いきや、意外にそういった場面が少ないのはサイラスが彼女の事を思い遣る気持ちが強いからでしょうし、
そういった意味では非現実感が薄められて良かったかも知れません。
それにしてもイーヴィが危なかっしくて、彼女の言動にはサイラスだけでなく読者も振り回される事になります。
本作はシリーズの序章といった側面も強いですが、嘘を自然とつく生き物である人間を、サイラスとイーヴィの二人の関係性の変化を通じてどう描かれていくかも含め、今後の展開が気になります。
ところで、本書は実は2回読んでいるんですが、再読時には少し前に1回目を読んだばかりのに、ジョディが殺された事件についてあまり覚えていなかった事に自分で自分にびっくりしました(笑)。
それだけサイラスとイーヴィの関係がどうなっていくのかを注視して読んでいたからだったのかな。
そして改めて読み返すと色々とツッコミどころある事に気付きます。
なんというか「偶然が過ぎない?!」って(笑)。
しかしながら何人も怪しい人物を提示し、二転三転させるあたりは再読であってもやはり読ませます。
サイラスのタトゥーは何を表しているのか。
そしてサイラスの兄の謎。
また、イーヴィは何から身を守るのか。
かつてイーヴィを見付けた人物はどうして身を隠しているのか。
いくつもの謎は続編でどれだけ明かされるのか、実に楽しみ!