真冬のアイスランド高原地帯。
猛吹雪が襲う人里離れた農場に、レオと名乗る男がハンディング中に仲間とはぐれたと訪ねてくる。
農場主のエイナールとエルナ夫妻はレオを招き入れるのだが、男の言動にエルナは不審なものを感じる。
一方、レイキャヴィーク警察の女性警部フルダは、男社会である組織の中で自分の能力を示す必要がある中で、若い女性の失踪事件を追っていたものの、私生活では娘のディンマが心を閉ざしていることに不安を感じていた。
『闇という名の娘』、『喪われた少女』に続く〈フルダ〉シリーズ3作目にして完結編。
フルダの運命がどうなるのか。
そしてそれはいかに始まったのか知っているのに、というか、知っているだけに読んでいて辛く感じるものがあります。
その上で語られる猛吹雪に襲われる田舎の農場で起こる事件が実にサスペンスフルに描かれていきます。
雪に閉ざされた農園を訪れた謎の男性レオ。
レオが何故農園を訪れたのかと疑いの目を向けるエルラですが、エルラから疑惑を告げられても向き合おうとしない夫のエイナールとの関係性なども相まって、レオの正体や目的といった謎、そしてレオに怯えるエルラの心情が胸に迫る中で覚える違和感。
その違和感の正体が明らかになった時に様相が一気に反転するのですが、その事件の真相に迫ることになるフルダにとって、それはまるで彼女の運命を暗じているかのようでもあります。
ガラスの天井に挑もうとしているフルダのその挑戦の結果や、フルダの家庭内の問題について読者は既に知っているゆえに、最後の最後まで苦く切ないものがありました。
それにしても、結末(未来)が分かっているものってあまり好きじゃないんですが、この逆年代記はアイスランドの重くのしかかるような雲のように、ずっしりと胸に迫るものがあり読み応えありました。