〈ヒポクラテス〉シリーズ三作目。
急死した前都議会議員は肝臓癌で死亡したと思われていたが、九ヶ月前に受けた健康診断で問題がなかった事よりその死に疑いが。
半ば強引にご遺体を司法解剖し、光崎教授によって明らかになった死因を巡って、真琴やキャシー、古手川刑事達が奔走します。
前半は当初は肝臓癌と思われていたものが感染症の疑いがあるという事で、パンデミックなどの恐ろしさと緊張感が高まります。
特にこのコロナ禍という現実もあって、その辺りはより強く感じるかも。
しかし、ミステリ色は弱めで光崎教授の出番も少なく、特に後半は物語を進めるためだけのような描写もあり、そういった意味では物足りなかったかも。
死亡した議員との関係がある議員連中がひた隠しする気持ち悪い真実も、表層をさらうだけであまり深くまでは掘り下げられていないので、その辺りも薄く感じる要因でしょうか。
また、確かに隠し通そうとしたものが明らかにされると社会的に抹殺されるかも知れませんが、皆が皆、命に代える事ができないとまで思うのは少々不自然かとも。
そんな中、光崎教授の医師の信念「ヒポクラテスの誓い」を口にする姿が印象的でしたし、キャシーのバックグラウンドを知る事も出来たのも興味深く、また、光崎に毒されいる様子の古手川刑事の姿も可笑しかったです。