「ル・カレなのに読みやすい」
そんな言葉に誘われ久しぶりにル・カレを読みました。
ブレジット(EU離脱)に揺れるイギリスを舞台に、ロシアの大物スパイがイギリス国内で活動を始めたようだとの情報を得たイギリス秘密情報部が大掛かりな作戦を行う事になる中、引退の時期が見えてきたベテランの情報部員ナットが何を思い何を決断するのかを描いたスパイ小説。
ストーリーは割合シンプルながら、集中しないと文章の繋がりを見失いそうになる所はやはりル・カレといったところでしょうか。
さて、主人公のベテランのスパイであるナットは、これまでの活躍に関わらず窓際に追いやられる事になるも、それでもより活躍できる場所をあきらめずにいます。
そんなナットがエドという若者からバドミントンの試合を申し込まれます。
最初はバドミントンの強手であるエドに挑む純粋な若者のようにしか見えませんが、エドは読者が想像するような人物として物語の中心に躍り出てきます。
そこからはそれまでのゆったりとした空気から一転、緊張感が高まり、ナットが事態を解決させるために行動する姿を追いかけ一気に最後まで読み切ってしまいました。
ところでナットとナットに接する人達は、何故か男女問わずに惹かれ合っているかのように見えます。
まずはナットにバドミントンのゲームを申し込むエド。
ナットが目を掛ける部下フローレンス。
何よりナットが助けを得ようと、かつてイギリス秘密情報部が運用していた要員アルカジーと再会した場面での会話や抱擁する場面などは特に「そっち系」なのかと穿った見方をしてしまったりして(笑)。
その辺りが気になりつつ読み進めると、著者の紡ぐ言葉と空気感、そして見えていたと思っていたものがひっくり返る様に快感を覚えます。
ラストは果たしてハッピーエンドなのでしょうか。
一見、ハッピーエンドのように見えますが、ラストのその先に決して幸せな結末は待っていなさそうな気もします。
けれどもナットの決断と行動は潔さと希望に満ち、ナット達の幸せを願ってやみませんでした。