州上院議員が刺殺され、刑務所を出所したばかりの元受刑者が逮捕され死刑判決が下される。
サム元警視の娘ペイシェンスと、元シェイクスピア俳優のドルリー・レーンは逮捕された男の無実を信じ事件を調査するのだが。
〈ドルリー・レーン〉四部作の三作目。
本作の主人公はサム元警視の娘ペイシェンス。
「え、前作から10年後?」
「主人公はドルリー・レーンじゃないの?」
と、意表を突かれました。
そして主人公を務めるペイシェンスの、ドルリー・レーンも認める観察眼に優れ行動力もある、若き女性による冒険譚的な部分が物語の大半を占めているようで、少々無鉄砲な彼女の言動にヒヤヒヤさせられる事も。
更に、ドルリー・レーンについては最初は前作『Yの悲劇』から10年経ち、老いや『Yの悲劇』事件の影響もあってか以前のような矍鑠とした姿が影を潜めたかに見え寂しさを覚えます。
しかしながらその明晰さは健在。
レーンも事件を通じて若返るかのようにも見え、最終章で見せる論理的推理、消去法でもって犯人を看破する姿に興奮しますね。
『Xの悲劇』や『Yの悲劇』に比べると地味で、動機も含め今一つすっきりしない部分は否めませんが、ペイシェンスの大胆さやタイムリミットサスペンスな部分なども楽しめました。
ところで本書は随分昔に読んでいましたが、自分でもびっくりするぐらい完璧に忘れていました(笑)。