冷戦下のベルリン。
工作員達が使用する隠れ家の管理業務を行っている末端のCIA職員のヘレンは、とある隠れ家のチェックを行っていると、使用申請が出されていないその隠れ家で工作員達の会話を録音してしまう。
更に同じ家で工作員が協力者を性的暴行する場面を目撃し、上層部へ告発しようとするも組織から追われる事に。
そしてその35年後、ヘレンとその夫は障害を持った息子に殺害されるという悲劇が起こる。
ヘレンの娘アンナは、一体なぜ弟が事件を起こしたのか真相を調べ始めるのだが・・・。
東西の冷戦時においてCIAの末端部員だったヘレンが管理する隠れ家で見聞きしたものとは果たして一体何だったのか。
触れてはいけないものに接したヘレンは、男性工作員が弱い立場にある女性への性的暴行を行っている事実を上層部に告発するも、握りつぶされ組織内で孤立させられてもなお調査を続けようとします。
女性として、一人の人間として声を上げ圧力に屈せず戦う事を決意したヘレンですが、組織そのものからも追われる事に。
しかしその彼女を助け、共に戦おうとする女性達も。
逃亡し、身を隠しつつも反撃するヘレン達の様子は緊迫感があるスパイ小説と描かれる中で、女性たちの強い意志というものが印象的です。
一方、そのヘレンを主人公にした過去のパートとは別に、35年後にヘレンの家族に起こる悲劇について娘のアンナが真実を求める様子が現代のパートとして交互に描かれています。
こちらも誰を信じていいのか分からないような状況の中で、アンナが雇った調査員ヘンリーとの間に芽生えるロマンスや、追い求めた真実が思いもかけない形で現れる様子など、過去と現在に繋がる陰謀の真実が浮かび上がってくる様子を巧みな構成でもって、スリラーとしての面白さを十二分に堪能させてくれます。
現代パートの方では多少ツッコミを入れたくなるところもありますが、600ページ以上ものボリュームを、《ザ・ボンド》という実在した組織の謎を元に、スパイ小説として、ミステリとして、読者を飽きさすこと無く一気に読ませてくれる力作です。
