『弁護士ダニエル・ローリンズ』 ヴィクター・メソス | 固ゆで卵で行こう!

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麻薬密売容疑をかけられた知的障害のある黒人少年テディの弁護を引き受ける事になった刑事弁護士のダニエル。

テディが未成年である事から不起訴となる見込みが、検察も判事も実刑判決にする様子。

誰かに利用されたとしか思えず、かつ、未成年であるにも関わらず、実刑に処しようとする裏にあるのは果たして・・・。

 

 

 

バツイチで元夫に未練タラタラでアルコール依存症一歩手前のような刑事弁護士ダニエル。

 

二日酔いで法廷に現れたりするような彼女が手掛ける事になるのは、麻薬密売容疑をかけられた知的障害がある黒人少年テディの弁護。

 

誰かに利用され無実なのは明らかに思えるテディを、法を逸脱してまで検察も判事も実刑判決にしようとする裏に何があるのか。

 

とにかくテディに不利な証言をする少年たち、ダニエルの敵に回る検察や判事連中などの憎たらしい事といったらありません。

 

いくらなんでもこんな事あり得ないだろと思いつつも、ダニエルと共に義憤にかられます。

 

また、弁護するテディは、そもそも施設から引き取られ養父母によって育てられていたものの、この事件をきっかけに見放される事に。

 

養父母の元に帰りたがるテディとの生活を送るダニエルは、テディの純粋さに触れて、より怒りを募らせます。

 

しかし、ストーカーと呼ばれてもおかしくないほど追いかけていた元夫もいけすかない相手との再婚が決まり、テディまで拘束されるなど、まさに八方ふさがりな状況に追い込まれるダニエル。

 

果たして不利なこの状況は逆転するすべはあるのかドキドキとヤキモキしつつ、ダニエルの側でずっと支えてくれる調査員のウィルや、友人のミシェルの存在が救いとなり最後はスカッとさせてくれます。

 

そしてラストの一文がいいですね。

 

ダニエルが過去の傷に向き合い、前を向いて歩いていけるようになる未来が見えて、不覚にも涙。

 

表紙のイラストの軽めの印象と違い、思いのほか内容は重いテーマを描いていつつも、魅力的な登場人物たちのお陰で重すぎないエンターテイメントとして楽しめました。

 

シリーズものではないのかも知れませんが、またダニエルたちの活躍を見てみたくなりました。