プラハの貧しいラビの家に生まれたモシェは厳格な父の元を離れサーカス団に飛び込み、奇術師として成功する。
しかしユダヤ人迫害が進み第二次世界大戦が勃発、かろうじて生き延びる。
そして現代、マックス少年は離婚する両親を取り戻すために、壊れた愛を取り戻す魔法を得るために、古いレコードに魔法を吹き込んだマジシャンを捜そうと決意する。
両親が離婚する事になったマックスは、父親が持っていた古いレコードに吹き込まれている愛の魔法を信じ、両親に再び愛を取り戻してもらうために老マジシャンのザバティーニに助けを求めます。
しかし探し当てた相手は、なんともいけすかないエロ老人(笑)。
子供が好きではないだけでなく、傍若無人な様子を見せたりマックスの母親の下着を手に取るなどし、マックスの母親に怒られたりする様子などはコメディのようで思わず笑ってしまいます。
でも、そんな彼はナチス政権下のドイツで奇術師として愛と栄光を得るもユダヤ人である事が発覚し、なんとかホロコーストを生き残った過去があります。
貧しいラビの家で生まれ、マジックに魅せられサーカスに飛び込んだモシェ。
そこで得た愛する人と、そして後悔に苛まれ立ち直る事も難しい別れを経て放った魔術・・・。
そんな過去の魔法が現代に蘇る時、それは奇跡として素直に涙を誘います。
本書はユーモアと愛が溢れた物語で、「生きていることが、それだけでもう、ひとつの祈りなんだ」との言葉と、最後に許しを得る場面が強く印象に残りました。
トリック (新潮クレスト・ブックス)