「月船町」のつむじ風が吹く十字路の角にぽつんと灯をともす食堂。
そこに集う人たちの姿を、雨降りの研究をしているという「先生」と呼ばれる主人公の目を通して描かれているのですが、そこはどこか異世界のようにも感じる不思議で優しい空気が流れています。
ちょっと哲学的だったり、人生の教訓めいたやり取りもあるのですが、思わず「ふふ」と笑ってしまうような描写も。
また、主人公のマジシャンだったという父が繋いだ時の流れには思わず目の奥も熱くなり、いつしか何故か懐かしさを感じる月船町の住人になりたいような気分に。
ここにいるよ、いていいんだと、ただそこにいることを肯定してくる優しい町。
そんな町へ、またいつかつむじ風を感じに訪れたい。
そう思わせてくれる、宝物のような物語でした。
つむじ風食堂の夜 (ちくま文庫)