資産家の老婦人は、自身の葬儀の手配を行ったまさにその日に殺される。
脚本家で小説家でもあるアンソニー・ホロヴィッツは、自身が手掛けるテレビドラマで知り合った元刑事のホーソーンから、この事件の捜査を行う自分自身を描いた小説を書かないかとの連絡を受ける。
脚本家であり小説家である本書の著者ホロヴィッツ自身がワトソン役となり、元警官のホーソーンの探偵ぶりを本にするために一緒に事件を追うという内容は、まるでホームズもののパスティーシュみたいですが、読んでみるとどちらかというと昨年話題を独占した『カササギ殺人事件』のようにクリスティっぽい感じがしました。
犯人についてはこの人かなと思ってた人物がやはりそうでしたが、犯人に辿り着くまでのヒントの数々が読者に全て伏線として明示されているのが分かる終盤が何より読み応えがあり、思わず最初からページを捲り確認したくなります。
また、本書の読みどころとして、探偵と助手二人の凸凹コンビぶりがポイントとなっています。
優秀な刑事でありながら退職せざる得ない事情というものがあるホーソーン。
その事情の真実も気になりますが、自己中心的な行動でホロヴィッツを翻弄しながらも、プラモデルを作る趣味があったりカミュの『異邦人』を読み込んでいたりと、意外な一面を見せてくれて、いつしかホーソーンの事を嫌なヤツでありながらも気になる存在として描かれている点もうまいですね。
ホーソーンとホロヴィッツの活躍は今後も描かれていくようで、二人の関係性がどうなっていくのかも含めて楽しみですね。
メインテーマは殺人 (創元推理文庫)