湖で四肢が切断され、舌も歯もない金髪の男の死体が上がる。
死体を引き上げた戦場帰りの風紀取締官カルデルは、結核に侵され余命幾ばくもない法律家ヴィンゲに乞われ、共にこの恐るべき所業を行った犯人を探し始める。
1793年、スウェーデンのストックホルムを舞台にした歴史ミステリです。
四肢を切断された男の死体が肥溜めのような湖から発見され、その身元と犯人を探す事を主軸としながら仏革命が起きた時代、そしてスウェーデンでは国王暗殺が前年に起きたという時代の空気感を存分に味わう事ができる物語でもあります。
そこに描かれるのは人間の業ともいえるような恐るべき所業の数々。
フランス革命の影響を心配するスウェーデン王の元では、腐敗した政治体系に貧困や不衛生な劣悪な環境が広がり、その描写は読んでて思わず鼻をつまんだり目を背けたくなる事も。
けれども欲や業にまみれた人間への希望と愛が描かれていて予想外に読後感も悪くありません。
戦争で片腕を失い義肢の風紀取締官カルデルの粗暴ともいえる言動の裏にある優しさ。
余命幾ばくもない事を覚悟している法律家ヴィンゲのあくまで理に則った正義感。
凸凹コンビに見える二人が単なる仕事上での相棒といったものから、カルデルの被害者たる者たちへの怒りや、ヴィンゲの正義を追及するためには手段も選ばないといった二人の男の矜持といったものが、事件を追ううちにいつしか二人の関係が深くなっていく様子を追いかける事もできるのです。
そしてそれがヴィンゲの心にどう影響を与えたのか。
それまでのヴィンゲでは考えられない事件の決着をつけるその姿は、なんとも強く印象に残りました。
本書は三部作の第一部とのこと。
この先、登場人物たちが抱える痛みや想いがこの時代にどう投影されていくのか、続きも是非知りたくなりました。
ニクラス・ナット・オ・ダーグ 「1793」