『ダ・フォース』 ドン・ウィンズロウ | 固ゆで卵で行こう!

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ダ・フォース 上 (ハーパーBOOKS)

ダ・フォース 下 (ハーパーBOOKS)

 

麻薬や銃を取り締まるニューヨークはマンハッタン・ノース特捜部、通称ダ・フォースを率いるデニー・マローン部長刑事は市民にとってヒーローであり街の王であったが、ある麻薬組織の手入れから栄光から転落の道へと辿り始める。

 

 

 

ニューヨーク市警、マンハッタン・ノース特捜部ダ・フォースを率いるデニー・マローン部長刑事。

 

数々の手柄を立ててきたエース警官の実態は、汚職にまみれた所謂悪徳警官。

 

クソにまみれた現実世界で、自身をマンハッタン・ノースの王と自負するマローンは、自分の街をこれ以上のクソまみれにせず現状維持するために王の力を振るいます。

 

その力は堅気に向かってではなく、あくまでギャングたちに振るうからこそ、それは必要悪な正義として見えるもの。

 

しかしマローンが自身がクソまみれになるのも必然で、気がつくとその足は抜け出せない泥沼に。

 

それに気付いても、一線だけは超えないと誓うマローンですが、そんな彼を陥れる罠の非情さに、決して正義の人とは言えないマローンに代わって読者である自分も思わず怒りに震え、そしてその先に待ちうけるものを予想して震えます。

 

一線を超えた後は更にその先へと進むしか道は無くなっていく中で、いよいよ窮地に陥ったマローンの元にもたらされるのは、やはり更なる地獄でしかないのですが、それでもマローンが仕掛ける逆転の仕掛けがうまくいく事を思わず願ってしまいました。

 

マローンの、ニューヨークを愛し、街を愛し、そして愛する人たちを守る、何よりも警官でありたいと願うその姿は、哀しくもあるけれどなんとも愛おしくも見えるもの。

 

狂おしいまでに込められた情念が胸を打つ傑作でした。