『あなたを愛してから』 デニス・ルヘイン | 固ゆで卵で行こう!

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あなたを愛してから (ハヤカワ・ミステリ1933) あなたを愛してから (ハヤカワ・ミステリ1933)
デニス・ルヘイン 加賀山 卓朗

早川書房 2018-07-05
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実の父を知らないまま、母親に育てられたレイチェル。

その母が死んで、実の父を捜し始めるのだけれど、それはレイチェルにとっては残酷な現実を突きつける事に。

やがてジャーナリストとして身を立て、結婚もし、更に幸せな未来が待っているはずだったのだが・・・。

 

 

 

プロローグ、主人公のレイチェルが愛する夫を撃ち殺す場面から始まります。

 

果たしてレイチェルが夫を撃つようになるまで何があったのか。

 

前半はそのレイチェルの人生を描いています。

 

実の父の事を明かそうとしない母親は、どこか性格が破綻しているようで、それはレイチェルにも影響を与えているようです。

 

母の死後、実父を捜し始め、ついに見つけたと思ったものの、やがてそれはレイチェルに残酷とも言える現実を突きつける事になります。

 

それでもジャーナリストとして有名になり、更に出世が見込まれる時に起きた悲劇がレイチェルの人生を一変させます。

 

前半はそういったレイチェルの人生が描かれるだけで、物語がどう転がっていくのか分かりません。

 

けれども、レイチェルが経験してきた事があったからこそ、後半に入ってのサスペンスやクライムノベルとして大きな動きを見せる中で、レイチェルが覚える絶望感や、そこからラストまで疾走するように描かれていく様子が活きています。

 

レイチェルが絶望から真相に辿り着いた後も、自分自身が何者であるのか、どうあるべきなのか問い続けながらも、胸の奥底にあるたった一つの真実を受け入れようとするラスト。

 

本作もルヘインらしい余韻に浸る事ができました。