『窓の向こうのガーシュウィン』 宮下奈都 | 固ゆで卵で行こう!

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窓の向こうのガーシュウィン (集英社文庫) 窓の向こうのガーシュウィン (集英社文庫)
宮下 奈都

集英社 2015-05-20
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周囲に馴染めず、他人と交わらずひっそりと19年間生きてきた佐古は、ヘルパーとして訪れた先の家で、思い出の品に額をつける“額装家”の男性と出会い、「しあわせな景色を切り取る」という彼の言葉に惹かれて、額装の仕事を手伝うようになる。





未熟児で産まれ、保育器に入れてもらえず、両親の愛情にも恵まれずに育った佐古。


他人の言葉には雑音が入り、見えるもの、感じるものも他人と違う事を受け入れる事によって、自分自身を閉じ込めて生きています。


そんな佐古がヘルパーとして訪問する先で、先生と呼ばれる人や額装を作るあの人と出会います。


額窓の仕事を手伝う事になった佐古は、額装の向こうから見えるもの聞こえるものが感情の先を揺り動かし、自分自身の中にある欠片は小さく人とは違って見えても、それは嘘ではないと自分自身を認める事ができる様子が優しく描かれています。


特に「夏はきぬ」を皆で歌う様子はとても鮮やかで、そして切なくも優しい場面として印象的でした。




ところで個人的には、先日初めて宮下奈都の作品を読んだ『太陽のパスタ、豆のスープ』(過去記事はこちら )よりもこちらの方が好み。


これをきっかけに他の宮下氏の作品を読んでいきたいですね。