『砕け散るところを見せてあげる』 竹宮ゆゆこ | 固ゆで卵で行こう!

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砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)砕け散るところを見せてあげる (新潮文庫nex)
竹宮 ゆゆこ

新潮社 2016-05-28
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濱田清澄は、ある日、全校集会で蔵本玻璃という一年生の女子生徒がいじめに遭っているのを目撃し、思わず助けに入る。

しかし、助けたはずの玻璃からは「あああああああ!」と絶叫され拒絶される。

それでも清澄は玻璃の事を助けようと行動に移るのだが・・・。




青春小説、恋愛小説としてライトな語り口で描かれていて、序盤はそのラノベ要素にちょっとついてけないかなと思いましたが、後半は一気読みでした。


誰もが何かしらの傷や屈折した感情を抱えているものだろうけど、それをある程度客観的に自分で見れる者はそこから逃げずにヒーローとなれるのかも知れません。


けれどもそれさえも自己中心的、自己愛として自分で自分を捕えてしまいがち。


清澄のように一歩を踏み出す、手を伸ばす勇気を持てた時に、それは永遠の輝きとなって誰かのそばで存在し続けるのでしょう。



さて、本書のタイトルは何とも意味深というか、惹きつけられるタイトルです。


で、実際に砕け散るところを見せてくれたのは誰だったのでしょうか。


なんとなく表紙のイラストもあって女性が言ってるのだなと、玻璃の言葉だと最初は思っていたものの、これはやはりヒーローである清澄の言葉だったんだろうなと思いました。


清澄が砕け散ることで、清澄自身も、そして玻璃を過去の呪縛から解放し、本来の自分自身の核を取り戻そうしてくれたのだと。


砕け散り、そしてその欠片を感じれたからこそ玻璃はその後もきっと幸せに過ごせたのだろうし、それはやはり奇跡だったのです。



ところで、誰かに何かをしてあげるという言葉は「してあげる」という部分だけ見ると、どこか上から目線のようで、そのような言葉を実際にはあまり使わないようにしてます。


でも、それもTPO次第なところもあって、状況によっては使ってしまう自分は卑怯で小さい男だなと思ったりして(;´▽`A``