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白の迷路 (集英社文庫)
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フィンランド国家捜査局で特殊部隊を指揮するカリ・ヴァーラ警部は、移民擁護派の政治家が殺害され、その頭部が移民組織に届く事件を捜査する事になる。
術後の後遺症に悩まされながらも、非合法な捜査を進めるのだが、フィンランド国内では人種差別によえる報復殺人が続発するのだった。
〈カリ・ヴァーラ〉シリーズ三作目。
フィンランドを舞台とした警察小説として始まった一作目からこのような展開になる事を誰が予想したでしょうか。
欧州各国で現在大きな問題となっている移民や人種差別などに正面から向き合った暗黒小説へと変貌した本書。
前作まではあくまでも正義というものを求めていた正統派ともいえる警察小説だったのが、前作のラストで主人公のカリ・ヴァーラにつきつけられた現実は、単純に正義を語る事ができなくなります。
更に手術の影響でもって私生活の面でも危機を迎えようとしているのですが、カリ自身はやはいり術後の影響でそれに気付く事もありません。
愛する家族を巻き込みながら、深い闇の中で見据える未来は?!
衝撃的な展開を見せ闇の世界へと入り込んでしまった主人公が、より深い闇の中へと迷い込んだ先に待ち受けるフィンランド内の目を背けたくなる現実は、決してフィンランド国内だけの問題でない事は現実の世界でも、今では日本という島国であっても突きつけられています。
シリーズ四作目は米国で出版されているとの事ですが、昨年、著者が急逝し、このシリーズがどのような展開を見せていくのかが確かめられないのが非常に残念であります。
