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追撃の森 (文春文庫)
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通報のあった森の中の別荘に向かった保安官補のブリン。
通報は誤報だったと到着前に報告を受けるが、その別荘で男女の死体を発見し何者かに襲われる。
ブリンは現場で出会った生き残りの女性ミシェルを連れて夜の森の中へと逃げ込むのだが・・・。
〈リンカーン・ライム〉シリーズが何よりも有名なジェフリー・ディーヴァーのノン・シリーズものです。
今回は女性保安官補のブリンが、殺し屋の男二人から女性一人を連れて深い森の中を深夜に逃げ回るというサスペンス。
もちろんそこはディーヴァー、単なるサスペンスではなく一ひねりも二ひねりも仕掛けが施されています。
どんでん返しを期待し、それを予想して読んでしまうからこそディーヴァーの、特に〈リンカーン・ライム〉シリーズは、読者にとっても著者にとっても大きなハードルがあるかと思います。
けれどもこういう単発ものにはそこまでの高いハードルを読者も求めてない・・・って思うのは自分だけでしょうか。
さて、本作ですが、ブリンが深夜の森の中、通信手段も武器も失い、怪我を負った中で足手まといの一般女性を連れて二人の殺し屋から逃れないといけないのですが、タフな女性であるブリンは知恵を絞り、相手を欺き、時には反撃に出ようとします。
そしてブリンたちを追う殺し屋のハートとルイスですが、特にプロであるハートはそんなブリンの反撃を喜ぶかのように、ハートもまたブリンをあざ笑うかのような仕掛けを行ってきたりします。
深夜の森の逃避行の中で、相手の裏をかこうと知恵を振り絞り、襲撃や反撃する場面など読み応えじゅうぶんです。
そこに前夫との間に起こった事や、息子との関係や現在の夫との関係など、ブリンの家庭の事情も加わり、ブリンとハートがどこか似た者同士のようで、二人が交わることはないと分かっていても二人の関係の変化が知りたくなってきます。
そのようにしてラストを迎える訳ですが、はてさてディーヴァーのどんでん返しは、〈リンカーン・ライム〉シリーズとは違った側面でもって著者の読者へのミスリードさせる仕掛けが炸裂して、思わずうなされるものが。
ただし、今回は物語そのものはどこかモヤッとしたものが残るのは否めなかったです。
それだけに美味しいホットチョコレートがブリンの未来に繋がるものであって欲しいと願わずにおれませんでしたね。
