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青空のルーレット (光文社文庫)
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第十六回太宰治賞受賞の「多輝子ちゃん」と表題作の「青空のルーレット」の二編が収録された著者の処女作品集。
表題作「青空のルーレット」は、バンドをしながら夢を追いかけるためにビルの窓を拭くバイトをする青年が主人公。
同じくビルの窓拭きをする仲間たちもそれぞれがそれぞれの夢を追いかけており、食べるために、生きるために、そして夢を見続けるために働く毎日。
そんな中で起こった転落事故を通じて、仲間たちの友情と、そして熱・・・それも熱過ぎない微熱ようなものが描かれて、その読後感はとても爽やかで心地よかったです。
夢を追いかけている人、かつて夢を追いかけた人、そして生きる事や幸せについてついつい思い悩んでしまうような人に読んで欲しい作品ですね。
第十六回太宰治賞受賞の「多輝子ちゃん」は、少女の初恋の行方を描いています。
周りからは反対された交際の果てに迎える悲劇。
それを乗り越えたのは一曲の、それも日の目を見なかった幻の曲。
ほんの偶然の出会いが生きる力を少女に与えてくれたように、その一瞬一瞬の出会いというものを大切にしていけたらなと感じました。
どちらの作品も爽やかな読後感を与えてくれるのが特徴ですが、物語としては表題作の方が単純に共感できる部分が大きくて好きですね。
けれども、「多輝子ちゃん」の方がスッと胸に染み入るものは大きいかも知れません。
とにかくどちらも、その時その時を大事に生きたいと思わせてくれると素敵な物語でした。
↑その一瞬の出会いを生きる力に。。。!↑
