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まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)
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駅前で便利屋を営む多田の元に、高校時代に変人で名の通っていた同級生・行天が転がり込んでくる。
ひょんな事から始まった二人暮らしに戸惑いつつも、便利屋に舞い込む様々な依頼を二人でこなしていく。
直木賞受賞作である本書ですが、自分にとって三浦しをんさんの作品を読むのは『風が強く吹いている 』以来の二作目です。
まほろ市で便利屋を営む多田と、そこに転がり込んできた高校時代に口を開いたのは「痛い」という一言だけだったという同級生・行天との不思議な同居生活を、便利屋に舞い込む様々な依頼を通じて描いている本作。
多田と行天の間にある、二人の過去が生む距離感が実に絶妙でした。
バツイチで過去への後悔の念に捕らわれている多田。
そして真冬にサンダルという姿で多田の前に現れた行天。
二人には高校時代にある因縁があるのですが、高校時代に言葉を交わした事もなく、卒業以来一度も会った事の無い二人が、妙に馬が合うのか同居生活に割合すんなりと馴染んで、まるで旧来からの親友かのような、まるで漫才でもしているのかと思うような二人のやり取りには何度も笑わされました。
しかし、そのユーモラスな描写で騙されそうですが、大の男二人ですから意見の相違というものは当然あります。
それは便利屋に舞い込んでくる事件に対する考え方によく現れていて、それはどこかホロ苦い印象を読者にもたらしてくれます。
傷つき、後悔を重ねるのが人生。
けれども「幸福は再生する事が出来る」と、幸せの再生と希望を描いています。
しかし、だからといってそれが決して容易く得れるものではなく、生きていればこそ、悩み、傷つき、戸惑いながらも、誰かを愛する事によっていつかはそれを得れるはずだと描いている様子に好感が持てました。
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