|
空に唄う
|
新米坊主の海生は、通夜の席で死んだはずの女子大生・埼沢さんの姿を見る。
誰にも見えないけれど、海生には見えるだけでなく触れることすら出来る埼沢さんと奇妙な同居生活が始まった。
後輩が突然貸してくれた本書。
貸してくれた後輩は読みだしてすぐに投げ出してしまったとの事。
さて、どんなもんじゃいと思って読みだしたんですが、自分も最初はちょっととっつきにくかったですね。
ちょっとだけ独特な表現方法は自分とは合わないかもと思いつつ読み進めたんですが、誰にも見えない埼沢さんが海生にだけは見えて触れ合う事もでき、更には・・・って、二人がどうなっていくのか気になって結局は一気に読み切ってしまいました。
しかし、なんともこの作品に漂う希薄感っていうのは不思議な感じだ。
主人公の海生は決して自己主張をしない青年で、作品に漂う希薄感はこの主人公から強く出ている。
誰かといると常に聞き役であったり、その誰かに合わせようとする海生。
決して主体性が無いという訳ではないけれども、その優しさが時に誰かを傷つけてしまう事にも気付く事はありません。
その海生が埼沢との共同生活を過ごすうちに、埼沢さんに惹かれていくき、惜しみない優しさを贈るのだけれども、過去の事を訊いたりなど決して深くまで入り込もうとしない様子はもどかしくもあります。
果たして埼沢さんがその海生の姿に何を思ったのか。
消える少し前に埼沢さんが海生に言った言葉がとても痛いです。
海生の持つ優しさは確かに海生が生来持つ素敵な性質。
けれどもただ優しいだけでは伝えたい事も伝わらないし、また逆に誰かからの心も伝わってこないのかも。
いろいろモヤッとした部分を残しつつも奇妙な同居生活が終わった時、海生の胸のうちにはきっと何か今までと違ったものが芽生えている・・・そう思える青春小説でした。
