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サクリファイス
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自転車ロードレースの世界を描いた青春ミステリの本書。
自転車ロードレースと言えば、なんといってもツール・ド・フランスが有名ですね。
最近はあまり観てませんが、以前アームストロングが全盛期の頃はTVでレースの様子を観るのが好きでした。
そのロードレースの世界について分かりやすく説明されていて、その説明によって決してストーリー展開のテンポを悪くしていない点は好印象でした。
しかしそれが逆に物足りないと感じる部分があったのも確か。
もっともっとその世界について深く描いて欲しかったという思いが強く残った。
それは主人公の白石や、同期の伊庭、そしてベテランでチームのエース石尾といった登場人物についてもっと描いて欲しかったという部分に繋がっています。
もともとは陸上競技の選手として将来を嘱望されていながらも、走る意味、勝つ意味を見い出す事が出来なない中で自転車ロードレースと出会い、それに魅了されていった白石は、チームを勝たせる為に、そしてエースを勝たせる為に自ら犠牲になる事を厭わない。
そしてそんな白石とは正反対の伊庭は、例えチーム内で反感を買ったとしても勝つ事に拘る。
エースの石尾はひたすらロードレースにだけ打ち込むストイックな姿を見せるが、それだけに何を考えているのか分かりづらい男。
彼らがロードレースの中に何を見て、そして夢を見るのか。
そしてその先にあるものとは。。。
タイトルの「サクリファイス(犠牲)」という真の意味が分かった時に胸に湧き起こる感動と、その感動とは裏腹にどうしても共感しきれない部分の二つの相反するような想いが読了後に胸に残ってしまうのは、主人公達を通じてこの物語の中をもっともっと走っていたいと思わせるのが大きいのかも知れないですね。
