『月光』 誉田哲也 | 固ゆで卵で行こう!

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月光 (徳間文庫) 月光 (徳間文庫)
誉田 哲也

徳間書店 2009-03-06
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誰にでも優しく、そして誰からも愛された美しい涼子。

しかしその涼子は、盗んだバイクに無免許で乗っていた同級生の菅井に轢かれて死亡。

単なる事故とされたその死に疑問を持った妹の結花は、姉と同じ高校に入学して真相を探り始めるものの明らかになるのは姉の抱えていた秘密と、そして・・・。







結構重い話です。

けれども重すぎず、読後感はサラッとしています。


まだ全作品を読んでるわけではないのではっきりとは言えませんが、これは誉田さんの作品の特徴の一つでしょうか。


姉の抱えていたおぞましい秘密。

それは姉と音楽教師である羽田との不倫の関係。

そしてそれを知った菅井ともう一人の同級生が仕掛ける非道な行い。


それらを直接的な性行為の描写を交えて描いている為に、よりおぞましくヘヴィな印象を読者に抱かせます。

ただ、あまりにも直接的過ぎて、途中からこれは官能小説なのかと錯覚させられるぐらいなので、正直そこまで描かなくとも・・・と思ってしまいました。

なので、こういったのが苦手だったり嫌いだったりする方は嫌悪感を抱く事は間違いないので注意が必要ですね。


また、涼子が自分から離れていき、そして死んでしまった事になんの疑問を抱かなかった音楽教師羽田や、涼子の死を単なる事故死と断定してしまった警察の対応などにも不満が残ります。


しかし、そういった不満点があってさえも、結花が真相を知ってから“赦し”を感じ取る事ができるまでの様子はなかなかに感動的でさえありました。


おぞましく目を逸らしたくなるような現実を知ったとしても、人はその痛みを抱えて、そしてそれに向き合って生きていく事で強くなっていくのでしょうし、また強くならなければならないのでしょう。