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黒蜥蜴 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)
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左腕に黒い蜥蜴の刺青をした美貌の盗賊、黒蜥蜴。
美しいものを収集する黒蜥蜴は、大阪の富豪岩瀬氏所有のものを頂くと、名探偵明智小五郎に挑戦状を叩きつける。
名探偵明智小五郎と妖艶な女盗賊黒蜥蜴との頭脳戦が描かれるのですが、美しいものばかりを狙ってきた黒蜥蜴のそのグロテスクで残虐で悪趣味な所業は狂気に彩られています。
そのグロテスクな様子と黒蜥蜴と明智小五郎との頭脳戦の様子も見どころですが、何よりも印象深いのは、対決するうちにいつしか黒蜥蜴が明智小五郎に抱くようになる、好敵手に対する尊敬と、そして淡い想い・・・。
二人の対決がクライマックスを迎える時、それは美しくも切ないラストを迎えます。
それまで自身の頭脳を高らかに誇っていた明智が、その時どのように感じていたのかその胸のうちは推して知るべきなのでしょうか・・・。
ところで自分が所有しているのはリンクに貼ってあるものではなくて、その昔出ていた江戸川乱歩推理文庫のもの。
それにはこの「黒蜥蜴」の他に「石榴」というミステリも収録されています。
こちらは本格ミステリとして楽しめるものなのですが、グロテスクな描写は抑え気味ながらその内容はやはり乱歩らしいもので、また、ある種潔よさまで感じるラストが結構好きな作品でした。
