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ビート―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)
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警視庁捜査二課の島崎洋平は、自身が関わっていた捜査情報を長男が流していた事を知らされ苦悩していたが、長男が情報を流していた相手が殺され安堵を覚える。
しかしその殺人に、家族との折り合いが悪く家族の鼻つまみ者と考えていた二男の英次が関わっていたのではないかと疑いを抱き、再び苦悩する。
警視庁強行犯第三係長の樋口警部補シリーズ三作目。
しかし樋口は今回は脇役となっており、主人公は二男に殺人の疑いを抱く警視庁捜査二課の島崎が主人公。
自身の期待に応えて柔道の道に励む長男に対して、二男の英次は柔道に挫折し家族との折り合いが悪く普段何をしているのか分からない家族内でも断絶状態。
二人の息子対して抱く島崎の父親としての想い。
それが今回のメインとなるテーマで、このシリーズ、警察小説というよりは家族小説としての側面が強かったですが、本作ではそれが更に推し進められた感じでシリーズで最も感動させられる物語でした。
捜査官として、父親として、己がどうあるべきか、どうすべきか懊悩する島崎。
警視庁強行犯第三係長の樋口警部補はそんな島崎の様子を見て何かを感じ、ある危惧を抱くように・・・。
家族と殆ど会話も交わす事もなくなった英次。
その英次が何を考えて生きてきたのか。
ダンスに夢中になり、そのダンスに真摯に向き合っている様子を見て、若い世代への偏見で見えなかったものが見えてきた時、島崎は父親としてある責任を取ろうと決意します。
その島崎の姿は実に哀しい結末をもたらそうとするのですが、すべてが明らかになった時、父と子の間で親子の絆がより強くなって現れる様子は、家族の在り方や想いなどを違った形で見せつつもシリーズ前二作を総括してくれるかのようで、自分自身単純かなとも思うけれど本当に感動させられました。
本作は著者の思い入れも強いようですが、その著者の思いが強く伝わってくる良作ですね。
本シリーズ、欠点も多かったと思いますが読んで良かったと思えるシリーズでした。
