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リオ―警視庁強行犯係・樋口顕 (新潮文庫)
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荻窪で起きた殺人事件。現場から飛び出した美少女が容疑者として捜査対象に。
第二、第三の殺人の現場でもその少女が目撃され、捜査本部ではその少女リオが犯人という方針で固まる。
しかし警視庁強行犯第三係長 樋口警部補はどこかに違和感を覚え、別の視点から事件を見つめなおす。
警視庁強行犯第三係長 樋口警部補を主人公としたシリーズ一作目。
人にどう思われるか・・・それを非常に気にするという、こういった警察小説やミステリでは珍しいタイプの主人公で、上司だけでなく同僚にも、そして部下からも、更には家族からもどう見られるのかを常に気にしている様子はなんとも小市民的で、思わず共感を覚える。
しかし、作中で何度も何度も樋口を通して繰り返し語られる世代論には正直辟易する部分も。
全共闘時代の後始末をさせられた世代と自分たちの世代の事を語り、少年少女たちが荒れるのも親の世代が甘やかされたせいなどと、とにかくくどいまでに世代論を繰り返す。
主人公と同じ世代を生きた読者などは、そこに大きな共感を覚えるかも知れないが、全共闘の時代でもなく、樋口の世代でも、その少し下でもない、どれでもない世代の読者にとっては読んでて苦痛に思えてくる部分さえあるかも(笑)。
それでも樋口という男が、八方美人的な性格である事のバックグラウンドとして重要なファクターである事は間違いなく、だからこそ体育会的な警察社会において、本人の思惑や想いとは裏腹に上司からも部下からも信頼篤い人物として一目置かれる存在になっているのでは。
終盤、超絶的な美少女リオに対面して我知らず惹かれてしまう自分を自覚してしまう樋口ですが、これまで理性や自制の塊だった樋口を、どこかこれまでの殻を破るような存在でありながらも、逆に樋口をより樋口らしい生き方を強く認識させる存在としてリオは印象深く描かれています。
そして樋口にこれまで歩んできた人生に、別の視点というか光を当てる存在として荻窪署生活安全課の氏家巡査部長が重要な存在として描かれています。
氏家との意見の交換や対立、そして氏家の樋口とは違った生き方を通して樋口自身が今まで気付かなかった部分や見えていながら理解できていなかった部分を見つめるきっかけを樋口は氏家から与えられたのでは。
そうして得られたものを樋口が見せる最後は、どことなくほんのり暖かみを感じさせて読了感も良かったですね。
