『ヒルダよ眠れ』 アンドリュウ・ガーブ | 固ゆで卵で行こう!

固ゆで卵で行こう!

ハードボイルド・冒険小説をメインにした読書の日々。


時に映画やRockな日々。またDragonsを応援する日々。そして珈琲とスイーツな日々。

ヒルダよ眠れ (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ヒルダよ眠れ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
アンドリュウ・ガーブ


早川書房 2008-09-05
売り上げランキング : 329794

Amazonで詳しく見る
by G-Tools



帰宅したジョージが発見したのはガスオーブンに頭を突っ込んだ妻ヒルダの死体。

当初自殺と思われたが、実は他殺と判明すると夫であるジョージに疑いの目がかけられ逮捕、勾留され裁判を待つ身となる。

ジョージの親友であるマックスは久しぶりに帰国したところこのニュースを知り、ジョージの無実を信じるマックスは親友の無実を晴らさんと調査を独自に始める。







無実の罪で捕らわれた男の無実を証明し真犯人を見つけるサスペンスといえばウィリアム・アイリッシュの『幻の女』が有名だが、本書は無実で捕らわれた男の焦燥感といった点で負けるものの、別の趣きがあって『幻の女』とはまた違った魅力を感じることができた。


それはなんといっても殺されたヒルダという女の悪女ぶりが大きい。


最初は大人しく身持ちの堅いという印象を受けるのだが、無実で捕らわれた夫に代わって真犯人を探そうとする友人マックスの必死の捜査によって徐々に露わになるヒルダの本当の姿。

現在、そして過去にヒルダに関わった人物に会い、話を聞くうちに露わになるその姿は、関わった人物誰もがヒルダは殺されても仕方のない人物像として浮かび上がってきます。


その最初の印象と違ったヒルダが浮かび上がっていく様子は、実際に身近にいたら本当に怖いな・・・と、フィクションと分かっていながらも実際にこんな人物がいそうに見えて、より強く思わされます。


そしてついにマックスの調査が身を結び真犯人に辿り着くのですが、真犯人が良心の呵責に押しつぶされそうになっていたという部分もなかなか説得力があって良かったですね。


もっとも真実に辿り着いたマックスが調査の過程で知り合った女性と迎えるラストはちょっと・・・甘いなぁ。

ブラックな感じのままでラストを迎えた方がより現実的だし、読了後の印象もより後を引いて良かったかなとも思いましたね。