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孤島の鬼 (創元推理文庫)
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会社の同僚で恋人の初代を、戸締りした自宅の中で胸を刃物で刺されて殺された箕浦は、その犯人を探し出し復讐せんと探偵趣味の友人・深山木に協力を求めるのだが、それは初代が実は捨てられた子であり、その出自に関わった恐ろしい事件へと発展する・・・。
なんとも妖しく、背徳的。
そしてだからこそ甘美なる乱歩ワールドが展開される江戸川乱歩の傑作長編!
少年時代にその禁断の扉を開けてその奥を覗いてしまったような・・・その恐ろしくも妖艶ながらも甘美な世界。
いま読んでもその時のドキドキするような感覚を思い起こさせてくれました。
密室殺人や衆人環視の中での殺人といった不可能犯罪に始まり、暗号に洞窟での宝探し。
トリックやサスペンス、冒険小説的な部分だけでなく、何よりも妖しく背徳的な雰囲気になぜかそこに惹かれてしまう部分がこの作品の大きなポイント。
孤島で妄嫉から行われている人外な出来事。
そこに加わるのは同性愛という禁断ではあるけれど純粋な愛。
それは美しも哀しく読者の胸を打たざる得ない。
主人公の蓑浦が諸戸道夫から受ける愛情。
それを蓑浦どこか甘受しようとしている様子があるだけに、尚更その想いは大きな哀切感をもったラストを迎えるのではないでしょうか。
事件自体はとても陰惨で孤島で行われていた事はなんとも猟奇的でありながら、それでもこの作品がかくも美しさを感じさせるのは、諸戸が最後の最後まで箕浦へ寄せる想いが大きいからでしょうね。
