『こたつ』 原宏一 | 固ゆで卵で行こう!

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こたつ (角川文庫) こたつ (角川文庫)
原 宏一

角川グループパブリッシング 2008-12-25
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プロポーズした相手は「こたつ道」という芸道の総本家の跡取り娘だった。

彼女と結婚する為には「こたつ道」の師範になるしかないと「こたつ道」の修行に励むおれだったが・・・。




本書は表題作である「こたつ」と「町営ハリウッドムービー」に二編が収録されています。


まずは「こたつ」ですが、恋人と結婚する為に「こたつ道」の修行を始める主人公をコミカルな様子で人間として成長していくさまを描いています。

「こたつ道」といっても500年以上も続く由緒ある芸道。

その道は決して侮る事のできないもの。

こたつに入る前に他人の前だろうが全裸にならなければならなかったり、こたつへの入り方から足の抜き方まで細かなまでの所作がしっかりと定められているのだ(笑)。

戸惑いつつも「こたつ道」の奥深さに惹かれていく主人公だけれども、裏の「こたつ道」の誘いを受けて心揺らぐ様子は、物事の本質を見ないままに安易な道へと流されていく現代の風潮への風刺がコミカルではあるけれど実はこめられているよう。



そして「町営ハリウッドムービー」では自主制作の映画フィルムを事故で失った事からハリウッドがハリウッドとして成功したように地方の町がハリウッドのように映画の町として成功させようという一大プロジェクトに発展していく様子をこれまたコミカルに描いています。

しかしハリウッドが現在置かれている状況が物語るように簡単に事は成さないもの。

ハリウッドが辿る道とは違った形で迎えるプロジェクトの終焉は、表題作の「こたつ」以上にリアリティがあって、より風刺や皮肉めいたものが感じやすかったですね。