| 二銭銅貨 (江戸川乱歩推理文庫)
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『怪人二十面相』『少年探偵団』と二作続けて乱歩の少年探偵シリーズを読んだところで、乱歩の原点とも言うべき「二銭銅貨」が収められている短編集を再読です。
実は先日読了した『怪人二十面相』『少年探偵団』は、約20年前に何故か表紙が天野喜孝氏のイラストを飾った江戸川乱歩全集の一部として二作品が合本されて刊行されたものが我が家にあり、それを再読したのですが、この『二銭銅貨』ものその全集の一部。
本当はその全集を揃えたいと思ったものの、まだ10代だった自分の財力ではとても揃えられる訳もなく、結局第一回配本分しか買えなかったという残念な思い出が(笑)。
で、本書ですが、まずはなんといっても「二銭銅貨」。
トリックを見破り得意満面のはずが・・・。
見事なオチの付け方です。
そして明智小五郎初登場の「D坂の殺人事件」。
ここから名探偵の歩みが始まるわけですが、実はトリック云々なミステリではないところがポイント。
本書に収められているのは他には「一枚の切符」「恐ろしき錯誤」「ニ癈人」「双生児」「心理試験」「黒手組」「赤い部屋」という短編が収められています。
その中で気に入ってるのは、脳髄の盲点によって仕掛けられた殺人への復讐を果たさんとする主人公だが、その復讐の果てに自分自身が脳髄の盲点に陥るという恐ろしい結末を見せる「恐ろしき錯誤」。
そして、恐ろしき大量殺人の告白の果てに夢から醒めたようなラストを見せながらも妖しい雰囲気を最後まで崩さない「赤い部屋」。
この二編が特に「二銭銅貨」と共に好きですね。
本書は、人の持つ欲望や闇を妖しい雰囲気で描きつつ、その中でミステリとしても楽しめる乱歩らしい作品集でお勧めです。
