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ぼくが愛したゴウスト (中公文庫 う 25-4)
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小学生の翔太がコンサートの帰りの駅で人身事故に遭遇する。
帰宅した翔太は同じ家、同じ父、同じ母、同じ姉なのに、違和感と腐卵臭を感じる。
そんな翔太の元に現れたのは駅で人身事故があった際に会った男。
その男はここは平行世界で、自分と翔太はあの事故がきっかけでこの世界に迷い込んだと言う・・・。
11歳の少年翔太が迷い込んだ世界の住人は“心がない”。
喜怒哀楽など感情は脳の制御下にあり、感情によって現れる顔の表情も同じく制御されており、その出力と技術によって他人とのコミニケーションを図る事ができるので、“心”は必要ない・・・という事らしい。
なのでこの世界に迷い込んだ翔太と山門健(ヤマ健)は、自然に喜怒哀楽の表情が出るけれど、この世界の住人は不自然な顔の作りになる。
そんな世界で二人は別次元からの侵入者という事で囚われの身となり観察及び看視される日々を過ごす事に。
心を持たない人達の世界はどことなく退廃的な匂いがして、その中で元の世界に戻ろうとする二人は出口の無い迷路を彷徨うかのよう。
それでも心のある二人は、元の世界で愛した家族や恋人と全く同じ存在だけれども全く違う存在と触れ合い、大きく心が揺れ動く。
特に多感な少年時代を過ごす事になる翔太にとって、心の存在、愛するという事、愛されるという事の意味はとてつもなく難しかったのでは。
月日が経ち、翔太が気付く、信じるものとは・・・。
それが本当であるならば、それが現実となった時こそ翔太は救われるのでしょうか。
それとも・・・。
