『空の中』 有川浩 | 固ゆで卵で行こう!

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空の中 (角川文庫 あ 48-1) 空の中 (角川文庫 あ 48-1)
有川 浩

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高度2万で相次いだ謎の航空機事故。

事故空域を調査したメーカーの担当者と事故の生き残りのパイロットがそこで遭遇したものとは。

一方、航空機事故で亡くなったパイロットの一人息子である少年は海辺で不思議な生物を拾っていた。






著者があとがきでも著しているように「大人ライトノベル」といった物語。


事故の生き残りでもある自衛隊の女性パイロットと事故を調査しにきた航空機メーカーの担当との大人の恋と、互いに相手の事をはっきりと意識していない幼馴染の少年と少女の恋と、二つの恋を絡めながら未知との遭遇を描いており、大人の恋はなんとも微笑ましく、二人のやりとりなどは読んでて思わずニヤケてしまうのは『図書館戦争』などの原型といった感じで楽しめました。


その一方でまだ発展途上である少年と少女の方は、父を失った痛みをしっかり受け入れる事ができずにいる少年と、フェイクと呼んで育てはじめた謎の生物に家族の幻影を抱いている少年の痛みと甘えを間違っていると分かっていてもうまく言葉にできず少年との壁を感じて胸を痛める少女の様子は、甘酸っぱいというよりも焦燥感を感じさせるような青春の痛みを感じさせてくれます。


その中でその少年少女を暖かく守る存在が実に大きい。

宮じいと呼ばれ慕われる彼は、航空機事故で少年と同じように父親を亡くし、それがきっかけで歪んだ憎悪を抱くようになった少女の痛みにもまっすぐに向き合わせてくれます。


事故で尊敬する上官を亡くしたパイロット。

父親を亡くし、家族を失った少年と少女。

そして彼らをとりまく登場人物と空の中の存在にフェイクと少年が呼ぶ存在。

それぞれが想いを真摯に重ねる事ができた時に奇跡はおきるのでしょう。


そしてその結末は甘いけれども、どこかほろ苦く切ないものでもありました。。。