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変わらぬ哀しみは (ハヤカワ・ミステリ文庫 ヘ 4-12)
ジョージ P.ペレケーノス 横山 啓明 早川書房 2008-03 売り上げランキング : 32082 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
1968年、黒人警官のデレク・ストレンジは仲間であるはずの白人警官からも、守るべき存在であるはずの同胞の黒人からも罵られたり裏切り者扱いされるも、己の職務に信念と誇りをもっていた。
キング牧師により黒人の権利拡張運動が行われいる中、一人の黒人青年が車に轢かれて死亡する。
単なる事故ではないと判明するが捜査は進まず、街では黒人による暴動が勃発しようとしていた。
黒人探偵デレク・ストレンジのシリーズですが、デレクが警官だった頃の出来事を描いたもので、シリーズとしてはこれが最後の作品にあたるようです。
まだまだ大きい黒人への人種差別が世間を覆っている中、キング牧師の人権運動が行われ時代が移り変わろうとする中のワシントンD.Cに住む人々の怒りや哀しみを描いています。
その様子は当時の雰囲気が匂い立つように描かれ、その中でデレクが警官として誇りを持つがゆえに、その誇りによって警官を辞めてしまうような哀しい事件が語られます。
貧困、差別、そして暴力にドラッグ。
市井に生きる普通の人々が喜び、悲しみ、苦悩し、どのように生き、そして死んでいくのか。
デレクを中心に描かれるそれらの物語は決してドラマチックに語られる訳ではないけれど、何故だか読むものの魂を震わせます。
特に、人種の壁を越えて互いに相手を認めあう様子が、相手が違う人種だからと構えてではなくごく自然に思い合う様子や、家族が家族を想い、そして抱き合う場面では涙を流さずにいられないのだ。
しつこいまでのその時代の音楽に関する描写や、ドラッグや暴力によって普通の人々が陥る哀しみなど、そういったテーマが苦手な方も多いかと思うけれども、やはり自分にとってペレケーノスは最高の作家だと再認識させられた一冊でした。
