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愚か者の祈り (創元推理文庫)
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小さな町で顔を砕かれた若い女性の死体が発見される。
ダナハー警部をはじめとした地元の警察では地道な捜査を始めるが、手掛かりが殆どない状態で捜査は捗らず世間の目や市長からの厳しい批判を受ける。
そんな中、ダナハー警部の部下であるマロイ刑事は被害者の身元の判明につながる、あるアイデアを思いつく。
地道な警察の捜査。
それは一つ一つの事実を解明していくというもの。
部下からは陰でサルと呼ばれているが有能なダナハー警部の信念が、多少地味な部分はあるもののしっかりとした警察小説としての魅力を引き出しています。
推理ではなく事実を組み合わせて事件を解決に導く。
そんなダナハー警部の信念は、たとえ市長や署長からの横槍が入ろうとも揺るがない。
その刑事としての経験や理論を、いマロイ刑事に時に厳しく叱責を加えながらも、どこか愛情がこもったような様子が伺えるあたりが、ダナハー警部の人柄を表していて良かったです。
そんなダナハー警部とマロイ刑事のやり取りは当人同士は真剣そのものなんだけれど、なんとなくユーモラスに見えるのもそういったところからかも。
この二人のやり取りを軸に捜査は地道に進められていく訳ですが、最後は若いマロイ刑事の直感と推理が事件を真の解決に導くことに。
推理といったものを嫌うダナハー警部も、マロイ刑事が被害者の身元を判明させる為に思いついたアイデアを実行させたりしたのと同じように、良いものは受け入れることができる余裕が心のどこかにあるところが警部を有能な刑事たらんとしているのかも。
また事件の真相についてもしっかりと最初の方に伏線が張られていて、読者に対しても割とフェアなミステリとしても楽しめました。
もっともマロイ刑事が行う被害者の身元の判明につながる「あること」は、そんなのが素人が簡単にできるものなのかっていうツッコミもありますが、ま、この辺は作品自体が古い(50年以上前に発表)ので、大目に見ておきましょう(笑)。

